平井です。
新規事業を考えて久しいですが、現代の新規事業に関して何となく感じていたことがまとまって来たので少し紹介を。まだまだ荒削りな論理ではありますが。
まず、事業を考える上での「いわゆるニーズと呼ばれるもの」について。
事業を考えるときには「誰のどんなニーズに答えるのかハッキリしなければならない」という通説のようなものがある。どこまで忠実にやっている人がいるのかは知らないがとにかく誰しもが聞いたことはあるだろう。
これに対して、次のような事例を頭に思い浮かべたとき答えはハッキリ出るだろうか。
「iPodがなかった時代ポケットに1000曲入るデバイスが必要だったのか」
「Youtubeがなかった時代、インターネット上にアップされた誰かのホームビデオを見たいというニーズがあったのか」
「googleイメージ検索がなかった時代、画像で何かを検索したいというニーズはあったのか」
「mixiがなかった時代、日記を書いてそれを見せるというニーズがあったのか。コミュニティを作りそこに人が集まって話をするというニーズがあったのか」
「Twitterがなかった時代、140文字で『今何をしてる?』ということを書きたいというニーズがあったのか」
それが浸透してしまった現代においてはそのニーズがあったのかなかったのか想像すること自体が難しいが、
間違いなく、「誰のどんなニーズに答えるのかハッキリしていた」ということはないだろう。
何が言いたいかというと、それを考えることが事業をスタートさせ、何年後かに大きな事業として発展しているかどうかに、その命題自体の重要性はそこまで高くないということだ。
現代においてニーズが明確にならないままスタートした(であろう)事業が成功するロジックとしては次のようなものがあると思っている。
■まず、現代においてはそもそも明確なニーズがないということ。
マズローの欲求段階説をご存知の人は多いかと思うが、高次の欲求になればなるほど、そのニーズは分かりにくい。
生きるために必要なことのニーズは全ての人がうなずけるニーズだろう。安全や安心もそうかもしれない。では上記に書いたようなサービスはどの段階に当てはあるのだろうか?
結局現代はものやサービスが溢れまくっている時代である。死ぬことなどほとんどないし、楽しいことはいっぱいある。人間が豊かになればなるほど、ニーズは思い浮かびにくくなる。その意味で現代においては明確なニーズなど存在しえないのではないだろうか。
■もう一つは出来上がった事業・サービスがニーズを生み出すということ。
考えておかないと行けないのは、事業が成功したり、多くの利用者で生まれるまでに少なくとも数年かかるということだ。インターネットに関わらず、現代の世界においてその数年という長さはあまりに大きなインパクトをもたらす。つまり芽を出した事業はその形のまま存在することはまれで、時代の流れにもまれながら様々に形を変え、急激な進化と淘汰を経て成長するものである。「にわとり、たまご」の話によく似ているが、その進化と淘汰の過程であるサービスがユーザーに対して価値観やニーズの変化をもたらし、そうして変化した人間が新たなニーズやサービスへの不満・要望を生み出す。そうして互いに影響しあい成長するものである。そして成長が進んだ数年後には以前のサービスとは外見を変えたものになってることはよくあることだ。
リクルート「創刊男」の発想術という本がある
リクルート「創刊男」の大ヒット発想術 (日経ビジネス人文庫)
著者:くらた まなぶ
販売元:日本経済新聞社
発売日:2006-08
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この本で、彼がどのようにして20年で14ものヒットメディアを作ったのかということの秘訣が書いているが、そこに明確に書いているのが、
「消費者ニーズ」という言葉はうそっぱち(本書p.96)
ということだ。本文を一部抜粋する。
中略…「消費者ニーズ」が誰にでも語られるものであれば、明らかにする浮ことができるものであれば、誰でもすぐに起業ができる。…中略…街をいくら歩き回っても「消費者ニーズ」は転がっていない。何百人に会っても誰一人として「消費者ニーズ」をしゃべってはくれない。…後略
その通りの理論だと思う。
代わりに彼が使ったのが「不」つまり不満、不利、不公平、不平等、などなどとにかく「不」の着く言葉、コンプレインを探ったのだ。これはすごく分かりやすいと思う。ニーズはないが、不満はあるのである。この言葉のニュアンスが大切だ。
だがしかし、それも今から10年も20年も前の話。インターネットも携帯もない。その時点でニーズが見あたらなかったのだから、現代にニーズなど早々出てくるものではない。さらにいえばサービスにできる「不」でさえも少なくなっている可能性だってある。ちまたにあふれるモノモノモノ。情報情報情報。何でもあるじゃないか。
少し話がそれるかもしれないが、時代を次のように分けることができるのではないだろうか。
ニーズの時代…明確なニーズがあった時代
「不」の時代…明確なニーズはないが、「不」という形でぼんやりと存在していた時代
現代…
・価値観がめまぐるしく変わる
・サービスが先行してニーズが作られる。
・埋もれているニーズに気付かされる
などなど。。
このへんでやめておきたいと思うが、要するに現代において事業を作るということは「誰のどんなニーズに答えているのかはっきりさせる」ということとイコールになっては視野が狭まるということだ。(もちろん、誰のどんなニーズかはっきりしている場合もあるが、そのときには競合との激烈な疲弊戦を覚悟する必要があるだろう..まあそれはいいや)
長くなりましたが、以上です。
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