拡大する自律分散型組織におけるオンボーディングについて考えてみる

みなさんこんにちは。こんばんはな方はこんばんは。

インフラエンジニアの篠隈です。

今回は、今社内で議論をしているオンボーディング周りの話を書こうと思います。

絶賛議論をしている最中で、現時点での篠隈の考えていることという感じだったりはするので、最終的にはまた違った形になるかもしれません。

今回のキーワードはおそらく、↓のような感じです。

  • 自律分散に動く範囲を人に合わせて小さくする
  • 情報のinput方法は人に合わせて変える
  • スキルを身につけたいと思う状態を先に作る
  • 会社が大きくなればなるほどオンボーディングが難しくなるという前提に立つ

またあくまでオンボーディングということで、究極完全体な人になってもらうみたいな話まではいかず、その一歩目という感じの話になります。

 

オンボーディングの大前提

まずは大前提となる話から。

以前なにかの記事で書いた気がしますが、自立して働いている状態とは僕は「社会の中に会社を位置づけ、その社会と会社の中に自己を位置づけられていること」だと思っています。

わかりやすくいうと、所属している組織が社会にどんな影響を与えている(与えようとしている)のか、その中で自分は何をして社会に価値を生むのかを認識できていて、軸が定まっているようなイメージでしょうか。

という前提の中でオンボーディングとは「その個人が働くことで、その個人にとっても会社にとっても社会にとっても良い状態になっている」ことを目指す上での「スタートダッシュをどう切れるか」、という言い方が出来ると思います。

もしかしたらこの時点で反論がある人も居るかもですが、少なくともアトラエは上記の状態を目指していく会社なので、その前提で話を進めます。

またどのような会社なのかによってもオンボーディングの仕方、ゴールは変わってきますが、アトラエは自律分散型組織であるので、オンボーディングの目指す先としては「会社のビジョンと自分のあり方とを重ねられていて、自律的に行動でき始めている状態」のようなものになっていきます。

このために必要な要素をなるべく削ると、↓のような感じになってきます。

  1. 自己への理解
  2. 会社の文化、組織、事業に対する現状の理解
  3. 会社の文化、組織、事業に対する方向性(未来)の理解
  4. その未来へ繋がる、今自分が取り組むべき仕事の理解、創出や、文化の体現

言葉で書くと簡単そうに見えますが実際にはこれはとても難しいことです。

なぜかと言うと、↑を達成する上ではざっくりわけると「入ってきた人」と「前から会社に居て受け入れる側の人」が居ますが、「自己」「会社」「社会」それぞれの要素にまつわる情報量は基本膨大であり、かつ人によって情報量に差があり3要素を全て知りつくしている人がおらず、相互に理解を深めていかなければいけないという前提から始まるからです。

新しく入ってきた人は「自己」に関する情報は間違いなく一番持っているでしょう。

しかし、「会社」についての情報は間違いなく昔からその会社にいる人のほうが多く、新しく入ってくる人のほうが詳しい、ということはほぼ100%有りえません。

唯一、「社会」だけはどちらが多く情報を持っているかはわからないですかね。

まずはこの情報量のズレのあたりから話を進めていきます。

 

適切な量の情報の共有が、自律的な動きを生む

 

大前提、自律的に動く上で「知っている」ということはとても重要です。

自律的に動く = 行動してしまう、ということですが、そのためには意志とスキル(知識)が必要です。(変数が多いと大変なので、スキルの話は後述します)

そしてその意志は価値を源泉とします。

要は「こんな良いこと(価値)があったらいいよなぁ、是非そうしたい(意志)なぁ、こんな方法論で出来そう(スキル)だなぁ、じゃぁやってみるか(行動)」的な話です。

これは個人の話であれば簡単ですが、会社の中で会社にとって価値があること、という要素が加わると大変です。

まず、何がこの会社にとって良いことなのかがはっきりとはわかりません。

かつ、誰かから「これは良いことだからやったほうがいい」と言われたとしても、そこに納得共感が出来るとは限りません。

価値は当然自分自身が感じるものなので、人に言われたからといってそれを良いと思い意志になり行動になるとは限らないわけです。

違う観点で行くと、自分自身が価値を感じているものが「過去に誰かがやっていることかもしれない」みたいな可能性もあり、ただそれも知らないので二番煎じは避けたく行動しづらくなるというのもありそうです。

または「なんらかのルールに反しているかもしれないから、やっていいかわからない」みたいなパターンもあるでしょうか。

もっとも、極論自分が仕事を通して何をしたいか、そもそもそこがイメージできないということも普通にあり得ます。

このように「自己」「会社」にまつわるような情報が一定揃っていないと、自律的に動くことができません

じゃぁ会社についての情報を整理して新しく入ってきた人にガッツリinputしよう!みたいなことになりがちですが、実はここには落とし穴があります。

それがタイトルにも書いている「適切な量の情報の共有」というところです。

人は聞いた話の殆どを忘れる生き物です。

忘れるは言い過ぎかもしれませんが、少なくともきっかけを与えられずに聞いた話を自然と思い出す、ということは無いです。

仮に覚えたとしても、情報が多すぎると何から始めればいいかがボヤけてしまい、迷いに繋がりがちです。

なので前提、「よかれと思って教えたこと」はあんまり効果がないと思ったほうがいいでしょう。

じゃぁinputは無くて良いのか?というとそんなことはなくて、キモは「その人が価値を感じる情報から順にinputすべき」というところです。

例えばエンジニアなら、その人が事業により興味が強いのか、技術により興味が強いのかとかはわかりやすい分岐点でしょう。

その人の興味があるところから入ると、その情報はその人にとって知ることが楽しいものになるので、血肉となり忘れにくい情報になっていきます。

そこに加えて、情報には大体ストーリーがあります。

例えば技術に興味の強いエンジニアだとして、技術系の話から入っていったとします。

どんな技術を使っているか等の話が理解できたとして、その裏にはなぜその技術を採用しているのかみたいなストーリーがあります。

そこには何らかの負債があったとか、その技術がこの事業には適していたとか、◯◯さんが好きな技術だったとか、そういう感じです。

人間は前提ストーリーが好きな生き物なので、人によって興味のある話は違えど、自然とそういった情報を入手していくことになります。

そうして理解が広がっていく中で自然と情報が増えていき、それが自分の興味が強い分野であることから、「じゃぁ自分はこうしてみたい」みたいな意志が生まれてきて行動になります。

もしかしたらそれは長く会社にいる人からみたらあまり成果の出ない行動かもしれません。

理由は、まだ情報量に差があって自分のほうが正しい、正しくないの意思決定が上手にできる可能性が高いからです。

なるべくそこを正しいものに気づかれないレベルで矯正するテクニック等の話は一旦さておき、まずはなるべく早く意志を持ち、行動し、成果が出る流れを小さくてもいいから少しでも早く作ることが重要です。

自ら行動して得た情報は、人から聞いたものよりも大きな意味を持ちます。

もっと事業のことを知らないと技術だけ考えても上手く行かなかったみたいなマイナス方向の話もあれば、自分の技術的なチャレンジが思いの外他の人の生産性向上に繋がったみたいなプラス方向の話もあるかもしれません。

いずれにせよ、そこで感じたプラスマイナス両方の価値、感情が、次の意志になり次の行動につながっていきます。

まさに自律分散な動きであり、その過程で「自己」「会社」の両方の情報が増えていっているといった感じです。

長々と書いてきましたが、要は「Aさんに対して上手く行ったオンボーディング手法が、Bさんにも上手くハマるとは限らない」的なことを色んな角度から書いただけなのかもしれません。

勘違いが生まれそうな点を先に潰しておくと「いろいろなことを知ってから動きたい」というタイプの人にあえて情報を制限しろ、と言っているわけではなく、あくまで「その人が自律的に動けるために必要最低限な情報をinputするところからはじめよう」という話です。

また中途入社等の経験豊富な人の場合、何を知れば自律的に動けるかを本人が知っている可能性が高いという違いはあれど、基本的には同じです。

 

「必要なスキル」が何かを入ってきた人自身が感じられる状態を作る

 

次は一旦飛ばしたスキルの話についてです。

当然ですがスキルは行動に移れるかどうかの壁になります。

僕は日本一美味い寿司を食べたいものの、作り方がわからないので実際に作ろうとする行動には繋がらないんですが、そんな感じの話です。

そして結論を先にいうと、前段の情報量のコントロールの話と全く同じになります。

というのも、スキルも詰まるところ情報だから的な話です。(身体的なスキルは除きます)

ただひとつ異なることがあるとすると、結果重視なタイプの人にとっては手段は何でも良かったりするので、手段を磨くことへの熱量がそんなに高くなかったりすることもあります。

もちろんそんなんじゃダメだ的な話ではありますが、採用をしっかりやっている以上は前提何かしらその人が熱を感じられる(意志を持てる)ポイントが、スキルを伸ばすこと以外の点にあるはずです。

その意志とスキルの掛け算で行動に繋がるとしたときに、意志が大きければ大きいほどスキルの壁が高くても超えられることを念頭に、どれくらいの壁の高さであれば行動に移れるかを意識しつつ、一緒に課題作りをすることが重要だと思っています。

そうすると、やってみたいという意志はあるがそのためにはこのスキルが必要だと認識できていて、かつスキルを身に着けて超えていけるイメージができている状態となるため、スキルを身につけることへの抵抗感は減り、むしろとてもポジティブなものに見えてくるはずです。

最初は小さな一歩ではありますが、こうやってスキルを積み上げて行くことは、自律分散的に動く上ではオンボーディング期を越えた後も必要なことだと思うので、大事な一歩かなと思っています。

反対に、前提となる意志がない状態で研修だけ受けさせるといったやり方は、効果は薄いことを前提に設計したほうが良いと思います。

教育コストを抑えるために研修を、という考え方も無くはないと思うので、それをやる場合は必要最低限にするか、input形式ではなくワークショップ形式寄りにするなどの工夫があったほうがいいかもしれません。

逆に、勝手にガンガン勉強するタイプの人はもちろん素晴らしいのでそのままで良いと思います。

 

文化は日常で感じ取り、非日常な時間で整理をすべき

 

前段2つの話はだいぶ現場での業務寄りの話をしてきました。

しかし当然ながら、その会社で活躍するためにはその会社の文化に馴染むこと、そして自分が体現できるようになっていくことも重要です。

文化浸透を進める上で稀に社訓的なものを読み上げさせるパターンの会社があったりしますが、個人的には効果はかなり薄いと思っています。

というのもそもそも文化とは人の行動や発言にあり、それを抽象化して「こういう行動や発言が多いよね」という認識に昇華したものであって、あくまで言動ありきの認識だからです。

また文化の浸透が進む = 日常の言動がその組織っぽいものに変わっていくということにしか基本的になりません。

そのため、まずは現場で仕事をしている中で「この会社の人達はこういう言動をしがちだな」ということを認識することが第一歩となってくると思っています。

(つまり、各現場がそもそも文化を体現できている状態なのかが重要にはなります)

そして自分もその中で一緒に仕事をすることになるため、「これまでの自分のやり方だとなんか合わないな」とか「意外としっくりくるな」みたいな感覚を自分の実体験として得ることになります。

まずはこの状況を作ることが重要です。

が、これだけでは文化の浸透には一歩足りないと思っていて、そこで必要なのが非日常な時間で改めてどんな文化なにかを整理することです。

当然日常の中では目の前の仕事をしっかりこなしていくことが重要であるため、その中で文化について考える、向き合うことはほぼないでしょう。

感じ取ってはいるが、認識として整理はされていないという状況です。

そのため、1on1なのかランチなのか飲み会なのか、何らかの場において日常の出来事を俯瞰的に捉え、個々人の認識の中に文化を刻んでいく工程が必要になってきます。

悩みを相談するみたいな形でもいいでしょうし、新卒の場合は例えば中途の人が「それって実はうちの会社特有で、他の会社ではあんまないことなんだよね」みたいな話をしてあげるみたいな形でもいいでしょう。

そうやって文化に対する認識が整理された状態で、また翌日業務に入ると、昨日までとはちょっと違った感じ方ができたりもするものです。

そうやって日常の中で文化に触れつつ意識もしつつという状況になっていくことで、自身の行動や発言にも影響を及ぼしていく、といった流れです。

ただし、この日常で感じ取り非日常で整理をするパターンは文化が薄まれば薄まるほど機能しなくなるやり方なため、オンボーディングという観点のみならず文化を濃く保つという意味でも重要だと思っています。

 

会社の成長は自律的に動くことの難易度を上げていることを理解する

 

このような話をすると想像できることとして「優しくしすぎなんじゃないか」とか「もっと大きな成果を目指すべきだ」みたいな話が出てきそうだな、という気がしています。

その気持ちは大いにめちゃくちゃ激しくわかる一方で、冷静に整理すべきは、これが自律分散ゲームだとしたときに、会社が大きくなるということはそのゲームの難易度がどんどん上がっていっているというところだと思っています。

このゲームはまず情報量がものを言う以上、情報が増えれば増えるほど難易度が上がるものです。

神経衰弱でトランプ10枚でやるのと52枚でやるのとでは後者のほうが難しいのと同じです。

つまり、会社が成長すればするほど情報が増え、難しくなっていくということになります。

また、人が増えれば増えるほど難しくもなります。

人が増えるということは役割が増えるということも同時に意味するので、細分化も進みます。

そうすると連携で成果をだす場面も増えてくるので、コミュニケーションが増えたり相互理解の数が増えたりと、シンプルに成果を出すまでの道のりが長くなります。

また同時に役割が増え細分化が進むということは、必要な専門性もより高いものとなっていきます。

issue自体の難易度は昔も今も未来も高いものは高いでしょうが、そのissueにたどり着くまでの工程が、情報量的にも人間関係的にもスキル的にも大きくなっているわけです。

もちろん組織の作り方(チームを小さくするなど)でも改善はできますが、それだけで完全に解決するのは難しいんじゃないでしょうか。

受け入れる側がその難しさを理解した上で、どうすれば少しでも早く自律的に動いて成果を出せるようになっていけるのか、というところには寄り添っていかないと、特に入って来たての人にとってはどんどん苦しい会社になってしまうというのが、自律分散型組織の拡大の難しさだなと感じています。

一方で単に優しくしているわけでもないとは感じていて、要は「苦しむべきは未来に対してであって、今に対してではない」というところかなと思っています。

今に対して苦しむ部分をなるべく小さくし、そこで成功を積みながら、より未来のより大きなissueに対して苦しむ場面を早く訪れさせる、という感じでしょうか。

健全に悩む状態を、なるべく早く作れる会社は強いと思います。

最後に

こんなことを考え、議論しながら最終的にHowに落としていきます。

いい感じなHowになったら、またそれはそれで記事に起こしたいところです。

アトラエではこんな感じのことをイチインフラエンジニアである僕が考えているように、会社のあらゆる要素に対して色んな人が色んなことを考え、理想的な会社をみんなで作っています。

常識や慣習にとらわれず、本当に会社に関わる全ての人にとって良い会社を作っていくことが前提であり、良いとされる会社です。

そんなアトラエに興味のある方はぜひ、こちらのページからご応募ください!

※このページのメッセージも、採用に関わるメンバーで一緒に考えましたw